ファドゥーツを出発した僕らは、
リヒテンシュタイン、スイスに隣接している、
オーストリアのフェルトキルヒへと向かいます。
時刻はもう18時を回り、あたりはすっかり暗くなっています。
暗く街灯もあまりない道をフェルトキルヒへと向かいます。
フェルトキルヒまでは、ロータリーは何度かあるものの、
道はほとんど一本道。迷うことはありません。
途中、工事によって、片側通行になっている道がありました。
日本と同じように簡易的な工事用の信号で管理されています。
前を走る車が片側通行の道へと入って行き、
僕もそれに続きます。
が、
道路わきの工事用の信号機を見ると、赤色の表示になっています。
ん?
赤は止まれのハズ。
そこで僕はブレーキを踏み、信号の前に踏みとどまります。
しかし、さすがはバカ。
なぜかここでテンパります。
アレ?前の人行っちゃったよ?
赤ハ止まれだよネ?
もしかしたら、この信号は別のものに向けての信号かもしれない! ←テンパり開始
だとしたら後ろの車に迷惑だよね?
心なしか、パッシングしてる気がするもん! ←気のせい
よし、行こう! ←??????(ここまで1.5秒)
そこで踏んでたブレーキをアクセルに踏みかえます。
「え?行くの?」
奥さんの清らかな美声が響きます。
「あqswでfrtgyっふじこlp;@:」
バカはなんて言ったか覚えてません。
すると後ろの車から、
「プァプァーン」
とクラクションが響き渡ります。
Q.ここでのバカの反応は?
A.このクラクション!「さっさと行けよ、このバカヤロウ」って言ってるんだな!
さらにアクセルを踏み込みます。
20メートル程進んだ頃、案の定僕らを包み込む、
柔らかな、それでいて激しい光が、僕らを照らします。
対向車のヘッドライトです。
一瞬で悟りを開きました。
「あ、ヤバい」
そう思ったバカは、右側の歩道の方へとハンドルを切り、
歩道と車道の段差をものともせず、歩道へと乗り上げました。
相棒の裏側と歩道のフチが擦れた音がしました。
そして、対向車はそのまま片側通行の道を走り去っていきました。
何とか事なきを得た僕らは、
リヒテンシュタインの歩道の上で、
さっきのクラクションを鳴らしてくれた車や、
その後続の車から、ジロジロニヤニヤの辱めを受けた後、
何事もなかったかのように、最後の車にくっついて、
片側通行の道を通過したのでした。
ドロスケ
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