生まれて初めて摂ることになった異国の地での夕食。
空腹はすでに絶頂を通り越している。
ローマで見たレストランのメニューには
見慣れたパスタの写真がついていた。
当然、日本語も表記されているメニューである。
このような状況では、
「食べたことのないうまい物」より、
「確実に腹の足しになる物」を選んでしまう。
イタリアといえばパスタ。
だが、私は生粋の日本人。
メニューの中から選んだものと言えば、
「スパゲッティー」のトマトソースであった。
そして、喉も乾いている。
飛行機の疲れをいやすためにも
グイっと一杯いきたいものだ。
側を店員が通りかかり、注文をする。
言葉は分からないが、
メニューの写真を指差してこちらの意思を伝える。
どうにか伝わったようだ。
ちなみにここまでの間、
向かいに座る妻とは一言も会話をしていない。
新婚旅行のはずなのに。
新婚旅行といえば、もっと楽しいものではなかったか。
少なくとも、幼少期から少年時代を経て青年へと至るまで、
自分にはそれは楽しいものであり、
幸せな時間だというイメージしかなかった。
だが、人は初めての慣れない環境で疲れ果てると
愛だの恋だのよりも自身の世界を守ることに専念するようである。
もしこれが、新婚旅行でなかったならどうだったろう。
結婚という儀式を経る前の、夫婦ではない状況だったら。
いまだ、彼氏彼女の関係性であったらどうだったのだろう。
また、少し違ったものになっていたのだろうか。
そんなことを考えているうちにビールが運ばれてきた。
その瞬間、自分は思考停止して
目の前の好物を口に運ぶことだけで頭がいっぱいになる。
「ようやく、ビールが飲める!」
感激ともいえる心理状態でグラスを口に運ぶ。
・・・・・・・。
あんまりおいしくない。。。
日本のビールに慣れた私の舌と喉は
穀物感たっぷりのヨーロッパのビールを
味わうのには向いていなかったようだ。
それでも、背に腹は替えられず、
秒という時間でわたしはグラスを飲み干した。
そして、2杯目のビールを注文しようとしたその時、
混乱が私に訪れた。
きりたん
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