とうとう山下公園に到着。
すでに周りは暗くなっている。
半袖姿で歩いたことを思い出せば、季節は初夏。
初夏で暗くなるとは、けっこう遅い時間である。
山下公園も「あぶない刑事」スポットの1つである。
だが、到着時には既にあぶない刑事モードは終わっていた。
外人墓地、港が見える丘公園での
イメージと実際のギャップが大きかったのだろう。
だからといってそれらの場所がつまらなかったわけでは決してなく、
なんというか、リアルに圧倒されたというか
ドラマを美化して勝手に脳内補正していた虚構が崩れたというか
そこに舘ひろしや柴田恭兵がいないのはもちろんのこと
「横浜」は都会であり憧れの地ではあるのだが、
私の住んでいる田舎と地続きで
リアルの延長線上でしかないと認識してしまったのだろう。
まあ、それはそれでいいだろう。
目の前にはライトアップされた氷川丸がそびえたっている。
少し歩いて赤い靴の女の子の像を視界に入れる。
旅行のガイドブックでは華やかにクローズアップされているのに
今はろくに照明も当たらない暗闇の中に佇んでいる。
遠い土地でリアルを感じる。
この場所もまた、私と同じように
日々めぐる時間の流れの中にいるのだと。
これを旅情というのだろうか。
すこし肌寒くなってきた。
夏の太陽の下、普段はあまり利用しない徒歩という移動手段で
汗ばんだ肌が冷やされたせいもあるだろう。
氷川丸の明かりに背を向けて
横浜マリンタワーのわきの道を戻っていく。
ちょうど腹も減ってきた。
宿で流し込んだビールのアルコールはすでに効果を発揮していない。
感覚的には暖かいものを腹に入れたいが
冷たいビールを体内に補充することも欲している。
温と冷。
都会と田舎。
まるで玉虫模様のように
陰と陽が共存する世界なのだろうか。
などと、単なる食い意地とアル中予備軍のあさましい欲を
なにやら崇高なものに置き換えて一人で悦に浸る。
そして、食欲の趣くまま
横浜中華街へと歩を進める。
きらびやかな雰囲気漂う氷川丸から
まっすぐ伸びる光の塔、マリンタワーを抜け
一気に暗さが増したような道を歩き続け
不夜城のような明かりの群れが目に映る。
写真では何回も見たことのある
大陸文化の装飾がなされた朱色の門を見上げながらくぐる。
視界が明るくなる。
まるで見えない力で引き寄せられるように
食欲をそそる匂いが歩みの速度を速めている。
中華街に到着した。
きりたん
最新記事 by きりたん (全て見る)
- フリーランスを目指そう! - 2019年8月21日
- NLPで、ToDoリストをわくわくに書き換えよう! - 2019年8月8日
- How to「決意」 - 2019年8月6日